朝日新聞2009年6月3日「学びの風景」より

「そろばん先生」が素早く数字を読み上げ、小学生たちがパチパチと玉をはじく。「だんだん難しくなるで~」2ケタ、3ケタ・・・6ケタ。足し算はどんどん難易度を増していく。

「はい」。元気よく手を挙げた子どもが先生に指されて解答した。「4万6958」。ほかの子どもたちが一斉に唱和した。「はい、ご名算!」

 

5年生が週一回の「計算科教室」を受けていた。私語をしている子はいない。少しでも気を抜くといっぺんに取り残されてしまうからだ。

授業をそばで見守っていた担任の上杉教諭は「そろばんの時間は普段うるさい子たちが全員、本当にシーンと集中するんです」と話す。

 

計算力や集中力を高め、人の話を聞く力を養える・・・そんな効果があるとして、尼崎市はそろばんに着目した。今年4月からは市立の全43小学校で「計算科」の授業が始まっている。

杭瀬小学校の上田校長は、「一つでも聞き逃したらダメという意識を持たせることは、他の教科の勉強にも役立つ」という。

 

「そろばん先生」の藤本和彦さんは、計算だけ出来ればいいとは考えていない。ピシッとした姿勢で授業にのぞみ、ノートの無駄遣いをしないように指導している。「そろばんは人格形成のひとつ。礼儀正しい、きちんとした大人に育ってほしいんです。」

 

~2009年6月3日朝日新聞「学びの風景」より~

<そろばん学習 集中力磨く> 尼崎杭瀬小学校 の記事の抜粋です。