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022)「円周率を計算した男」鳴海 風著

円周率を計算した男
「円周率を計算した男」 著者:鳴海 風 発行元:新人物往来社

鳴海 風(なるみ ふう):1953年新潟県生まれ 東北大学機械工学専攻 デンソー入社。1992年 「円周率を計算した男」で第16回歴史文学賞を受賞。2006年日本数学会出版賞受賞。

 

著者は、上記の略歴に見るように、エンジニアとして働くかたわら和算を題材とする短編を書いているユニークな作家です。本書には、表題作をはじめ、6作が掲載されています。

 

主人公 建部賢弘(たけべ かたひろ)は世界で初めて円周率自乗の公式を発見した若き算術家。算聖とうたわれた師 関 考和(せき たかかず)との葛藤を経つつ、ついに円周率の公式を明らかする苦闘を描いている。

 

 

上野健爾先生のあとがきにも興味深い言葉がありますので、一部紹介させていただきます。

 

・江戸時代には多くの人が数学に興味を持ち、難しい問題を作り、それを競って解いていた。多くの人が数学嫌いである今日とは全く違う世界が江戸時代にはあった。

・数学のみならず江戸時代の人たちは文化的に極めて高い生活をしており、そのことが江戸時代後期から明治時代にかけてヨーロッパの学問を輸入する必要が生じたときに、諸外国に較べてきわめてスムースに受け入れることができた理由である。