そろばんネタ帳

そろばん四方山話

028)最高級そろばん!27年ぶりのお帰りなさい!

 昭和58年に生産された二代目雲文作のワンタッチそろばんが修理に帰って来ました。27年ぶりのふるさと帰りとなります。二代目雲文が、自ら丹精をかけて修理を行い、立派に仕上がって来ました。

そのあまりの素晴らしさに感激し、所有者の方にご了解を得て、すこし紹介させていただきます。現在は、当初の持ち主のお子さんが使用なさっているとのことでした。丁寧に愛情を持って使っていただいていることが、そろばん全体に充ち溢れています。幸せなそろばんです。

 

【本黒檀のトクサ仕上げ】

枠材は最高級の本黒檀。普通の黒檀のような木目はほとんど見えません。「木の真珠」という別名を持つ稀少な木材です。この製品は、その最高素材の肌合いを活かすために、ニスやワックスは使用しない「トクサ仕上げ」を行っています。「木賊(トクサ)」は一般の家庭にも生えている庭草ですが、研磨材として利用できます。さらに細かい仕上げは「椋(ムク)の葉」を用いて行います。

「トクサ仕上げ」のそろばんは、新品の時には光沢が少ないため「ニス仕上げ」よりも地味な印象があります。ところが、長年使い込んで行くうちに、手の脂(アブラ)分を吸いながら、独特の深い光沢を醸し出してきます。皆さん、この画像から、気品のある、その深い光沢を感じ取って頂けるでしょうか?

 

【岩ツゲ製の玉】

このオーナーのこだわりは、玉材にもいかんなく発揮されています。

「広島から岡山県にまたがる石灰岩帯の急壁にへばりつくように生えている備後黄楊(ビンゴツゲ)」。直径30~50mmに満たない幹から、1個づつ玉をくり抜いてゆきます。極めて緻密な肌合いと重さが、絶妙の使用感を生みます。芸術品のように細やかな木目は、通常の本黄楊よりもさらに繊細です。石灰岩の水によって育つ為か、黄色い色目が少ないのが備後黄楊の特長です。

もちろん現在では入手不可能です。

 

【煤竹の竹芯】

 

このクラスの雲州堂のそろばんでは当たり前ですが、藁ぶき屋根の構造材として、百年以上煤を浴びた煤竹を竹芯に使用しています。

この画像から、竹芯の磨き上げられた光沢が見えるでしょうか?煤竹は、使えば使うほど磨きあげられて、玉の運転を支える縁の下として、早く正しい計算を保証しています。

 

2代目雲文作
  
2代目雲文作

2代目雲文作
  
2代目雲文作

 

  このオーナーがお求めになった27年前でも、非常に高価なそろばんだったでしょうが、現在では、ほとんどの素材が入手困難となっています。「お金に替えられない価値」です。

このような機会をいただいたことに感謝申し上げます。